臨床試験・治験

BINBO受容体作動薬

BINBO受容体作動薬であるBB-6741は家族性貧乏症の特異的治療薬となる可能性があり、臨床試験に向けた準備が現在進められています。家族性貧乏症では、BINBOペプチドがその受容体に強く結合しないか、若しくは、受容体に結合してもシグナルが細胞内に十分伝わらないことが原因だと考えられています。一般に使用されている抗不安薬と異なり、高価な買物をしたり高級なサービスを受ける時に生じる不安のみを緩和するため、眠気、ふらつき、血圧低下、呼吸抑制などの副作用を起こす心配がありません。

マイクロドーズ臨床試験

厚生労働省が「マイクロドーズ臨床試験の実施に関するガイダンス」を公示したことを受け、本学会ではBB-6741の第I相臨床試験に先立ち、その薬物動態を人で調べるためマイクロドーズ試験を計画しています。マイクロドーズ臨床試験では、ヒトで薬理作用を発現すると推定される用量(薬効発現量)の1/100を超えない用量または100μgのいずれか少ない用量の被験物質を健常人に単回投与します。これにより、BB-6741の吸収、分布、代謝、排泄プロファイルを知ることができると考えられます。薬物動態に関する情報を臨床開発初期に得ることができれば、経費を削減し開発に要する時間が短縮されることでしょう。

マイクロドーズ試験の紹介

加速器質量分析法によるジドブジンの薬物動態および末梢血単核細胞中濃度の測定

Use of accelerator mass spectrometry to measure the pharmacokinetics and peripheral blood mononuclear cell concentrations of zidovudine.
J Pharm Sci. 2008 Jul;97(7):2833-43.
加速器質量分析法(AMS)は極めて高感度であるため薬理学において多くの新しい用途に利用されている。本研究では、健常志願者に520ng(標準1日量の100万分の1未満)の[14C]-ジドブジンを投与し、本剤の作用部位(末梢血単核球)の[14C]-ジドブジン濃度を加速器質量分析法により測定した。さらに、この微量の薬物動態を明らかにし、以前に発表された治療用量のパラメータと比較した。微量のジドブジンの薬物動態パラメータは、以前に発表された治療用量の値の95%信頼区間または標準偏差内に収まった。投与後96時間にわたり、血液、尿、便、唾液、末梢血単核球を定期的に採取し、ジドブジンおよび代謝物の濃度を分析した。その結果、ジドブジンは速やかに吸収され消失し、主要代謝物は1種類であり、末梢血単核球に取り込まれた。14Cの物質収支の評価では、96時間後もかなりの部分のジドブジンが存在しており、消失半減期が大幅に延長していることが示された。本研究の結果は、ジドブジンの薬物動態学的特徴(PBMC内濃度など)を研究するためのツールとしてマイクロドージングおよび加速器質量分析法が有用であることを示しており、微量の放射性標識化合物を使用した薬物動態および物質収支の研究に用いるツールとして加速器質量分析法の高い有用性を明らかにしている。

マイクロドーズ試験に用いる陽電子放射断層撮影法

Positron emission tomography for use in microdosing studies
Curr Opin Drug Discov Devel. 2008 Jan;11(1):104-10.
微量の放射標識薬物を用いた陽電子放射断層撮影(PET)は、現代の医薬品臨床開発で広く受け入れられるようになってきた。この方法がユニークな点は、治療対象となる組織での薬物濃度を直接定量的に評価することが可能であり、薬物動態と薬力学とのギャップを埋めることができることにある。本稿では、抗癌剤、抗感染薬、中枢神経系薬剤の研究における現在のPET利用を紹介する。前臨床試験と臨床医薬品試験とのインターフェイスとして位置づけられるPETマイクロドーズ法は医薬品開発のための強力で極めて革新的なツールである。

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