貧乏性と貧乏症

貧乏性という言葉は誰でも使う日常語です。貧乏性の人の多くは、日常生活に支障を来たすことなく幸せな毎日を送っています。しかし、貧乏性のために生活の質(quality of life, QOL)が著しく低下し、何らかの医学的介入を必要としている方もいます。本学会では、このような状態を貧乏症と診断し、適切な治療を行うことにより、物質的にも精神的にも豊かな毎日を過ごせるよう様々な取り組みを行っています。

最近の疫学研究よると、わが国の貧乏症患者数は310万人と推定されています。欧米の研究では貧乏症の有病率は1%~5%と報告されています。このバラツキは、ひとつには人種民族間の貧乏性に対する考え方の違いもありますが、国によって診断基準が異なることによると考えられます。われわれは各国の関連学会と協力し、国際診断基準の策定に向けて、基礎研究、臨床試験、エビデンスの収集・構築に取り組んでいます。

貧乏性医学研究会から日本貧乏症学会

われわれは昨年まで貧乏性医学研究会として活動を行ってきましたが、昨今のグローバル化に対応し一層の発展に向け、2008年3月の理事会の議決により、社団法人 日本貧乏症学会として新たなスタートを切った次第です。今後は産学連携を密にし、地域住民との交流を深めるとともに、貧乏症の病因や治療法に関する情報を世界に向けて発信していく所存です。貧乏性の方々と共に、明るい日本、豊かなアジア経済、そして世界経済発展のため、医学的アプローチによって着実に前進していこうと考えています。

国際化に向けて

欧米の関連学会との合同シンポジウムも視野に入れ、本学会の会員は継続的に英語を自習することが強く推奨されます。TOEICや英検を目指した短期的な勉強だけでなく、必要な知識を入手し自ら情報を発信できるダイナミックな英語学習が望まれます。また、学会誌の要旨も英語で書くことが望ましいと考えられています。このためには、普段からラジオ講座を聞いて英語の耳慣らしをするのが効果的です。ただし、英会話教材を買い込むだけで眠らせておく教材貧乏には注意が必要です。最近は主要医学雑誌で無料のポッドキャストを発信している所が増えていますので、これらを有効活用するのが良いでしょう。

食育

貧乏症の食事療法に限らず、普段の食生活は豊かな人生を送る上で基礎となるものです。栄養の偏りや不規則な食事は、貧乏症や生活習慣病の危険因子だと考えられています。お金を残そうと思ったら、まず最初に行うことは食費の切り詰めですが、病気になると医療費がかかり、それまでの努力が水の泡になってしまいます。このため、安く手軽にできる美味しいメニューの開発も、日本貧乏症学会の重点研究領域として強力に推進していく必要があります。平成18年度から平成22年度までの5年間を対象とした食育推進基本計画を踏まえ、心身の健康増進と豊かな人間形成に向けた努力を継続していきます。

幸福度ランキングと貧乏症

世界で最も幸福な国はデンマークという調査結果がWorld Values Surveyから報告されました。幸福度は富だけで決まるのではなく、選択の自由や寛容性などが重要な要因であることが分かりました。アメリカは第16位、残念ながら日本は上位10カ国には入っていません。以前は勤労と貯蓄が幸福への近道のようでしたが、今は違うようです。幸福度と貧乏症との関係は未だ明確にされていませんが、貧乏症の治療によって国民の平均幸福度が増すことはまず間違いないでしょう。

マイクロドーズ臨床試験

BB-6741の第I相臨床試験に先立ち、その薬物動態をヒトで調べるためマイクロドーズ試験を計画しています。マイクロドーズ臨床試験では、ヒトで薬理作用を発現すると推定される投与量(薬効発現量)の1/100を超えない用量または100μgのいずれか少ない用量の被験物質を健康な被験者に単回投与します。これにより、被験物質の薬物動態に関する情報を医薬品の臨床開発の初期段階に得ることが可能になり、BB-6741の吸収、血中動態、排泄特性、代謝物プロファイルを知ることができると考えられます。

マイクロドーズ試験の論文紹介

Microdosing assessment to evaluate pharmacokinetics and drug metabolism in rats using liquid chromatography-tandem mass spectrometry.  Pharm Res. 2008 Jul;25(7):1572-82.
ラットにおける薬物動態および薬物代謝を液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法により評価するマイクロドーズ試験
目的:ヒトにおける薬理用量以下のマイクロドーズ試験をサポートするための分析ツールとしてのLC-MS/MSの感度要件を評価し、ラットでマイクロドーズからヒトの治療相当量まで薬物動態の用量比例性を検討し、マイクロドーズを投与したラットで循環代謝物の特徴を明らかにする。材料と方法:雄性Sprague-Dawleyラットに対し、アンチピリン、メトプロロール、カルバマゼピン、ジゴキシンおよびアテノロールからなる5種類の薬剤を0.167、1.67、16.7、167および1670μg/kgの用量で経口投与した。固相抽出または液液抽出により血漿サンプルを抽出し、LC-MS/MSを用いて分析した。結果:100μLの血漿サンプルおよびAPI 5000を使用し、アンチピリン(10pg/mL)、カルバマゼピン(1pg/mL)、メトプロロール(5pg/mL)、アテノロール(20pg/mL)およびジゴキシン(5pg/mL)の定量下限値が得られた。アンチピリンおよびカルバマゼピンでは0.167~1670pg/mLの範囲で、アテノロールおよびジゴキシンでは1.67~1670 pg/mLで用量比例性の薬物動態が観察されたが、メトプロロールの薬物動態は用量に比例しなかった。1.67μg/kgを投与したラットの血漿でLC-MS/MSにより数種類のカルバマゼピンの代謝物が特定された。結論:ヒトにおける薬物動態および薬物代謝のマイクロドーズ試験をサポートする高感度LC-MS/MS法が有用である可能性が本試験で示された。

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